日本の対外戦争と世界の情勢

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zoom RSS 日露戦争・その五

<<   作成日時 : 2006/08/24 12:33   >>

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日露戦争(1904(M37)/2-1905(M38)/9)直前の韓国問題、特に露国提案の韓国中立化案について、外務省編纂・外務省蔵版 日本外交文書 第三十五巻自明治三十五年一月至明治三十五年十二月 日本国際連合協会発行 事項七 韓国の永世中立に関する露国提議一件等を参照しながら説明します。日本は日清戦争による韓国における日本の優越性を拡大することに腐心しましたが、勿論欧米各国もアジアにおける覇権を目指してあらゆる権謀術数を繰り出しました。その一つが露国提議による韓国の永世中立案であり、その取扱を巡って各国間で神経質な駆け引きが展開されます。その一端を外交文書によって紹介したいと思います。各文書の最初にある [9/19一八二]等は[1902(M35)年9月19日付け文書一八二]等を表します。

[9/19一八二]小村外務大臣より 在露国栗野公使宛(電報) パヴロフ米国に於いて日露米三国共同保障の下に韓国中立を提議したる趣通達の件
Sent, Sept.19th, 4-30 p.m.
Kurino, Petersburg.
No.97. United States Minister to Japan told me under strict confidence that Mr. Pavloff on his way home stayed with Mr. Iswolsky and had long conference with him on the Corean question coming as the result to the conclusion that they should try to realize the neutralization of Corea under the joint guarantee of Japan, Russia and United States and that Mr. Pavloff was further to consult with Count Cassini in Paris in the matter; and then the three diplomats were to make joint representation to their Government with further recommendation that the Russian Government should first approach United States Government and induce them to take initiative on the question.
United States Minister having told me further that he had reported the matter to his Government without any comment, I requested him to express my desire to his Government to the effect that United States Government if approached by Russian Government on the question might be good enough to consult Japanese Government before taking any step in the matter.
I added as my personal opinion that it would be impossible for Japan to accede to any arrangement which might impair the actual position of Japan in Corea and that the immediate result of the neutralization of Corea as contemplated by the Russian diplomats would be to annihilate Japan's preponderating position in Corea and consequently to preclude her from exercising any check against Russian action in Manchuria.
Colonel Buck promised me to report my desire as above stated to his Government.
The above is strictly confidential and for your own information.
Komura.
(要約)
九月十九日午後4時30分発
在ペテルスブルグ 栗野公使宛
第97号。駐日合衆国公使は極秘との条件で、私に次のように語った。駐韓露国公使パヴロフ氏は帰国の途次、駐日露国公使イスヴオルスキー氏と共に滞在し、韓国問題について二人で長い間会談をして、二人は日露米の共同保証の下に韓国の中立化を実現すべく努力すべきであるとの結論に到達した。そして、パヴロフ氏はその上更にその事案について巴里で駐米露国大使カツシニー伯爵と協議した模様である。そして、それから該三外交官は更に露国政府は先ず最初に合衆国政府と接触し、合衆国をしてこの問題に関して率先して関与するように誘導しなければならないとの提議を露国政府に共同して進言することにしたとのことである。
合衆国公使は私に対して更に、彼はその事案を注釈なしに米国政府に報告したと語ったのであるが、私は米国公使に対して、合衆国政府がもし露国政府からその問題に関して接触を図られた場合には、その事案について何らかの行動を起こす前に充分な善意を持って日本国政府に相談して頂ければ幸甚であるとの趣旨の私の希望を米国政府に伝達して貰いたいと要望した。
私は私の個人的な意見として、次のような問題点を追加表明した。即ち、日本国にとっては、韓国に於ける日本の現在の状況を損なう恐れのある如何なる話し合いにも同意することは不可能であろう事、及び露国外交官によって企図されたような韓国の中立化の直接の帰結は日本の韓国に於ける優越的な地位を全滅させるものであろうし、且つ結果として満州での露国の活動を何か抑制しようとするような行動を我が国が取ることを不可能にするであろう事、等である。
駐日米国公使バック陸軍大佐は私に、上に述べられたような私の要望を合衆国政府に報告することを約束した。
上記電文は極秘とし、貴方だけへの情報として秘匿すべきものである。
小村外務大臣より

[9/20一八三]小村外務大臣より在英国林公使宛(電報) 在露公使宛電報第九七号を在仏、在米各公使へ転電方訓令の件
Sent, Sept.20th, 11-15 a.m.
Hayashi, London.
No. 94. Full text telegram No.97 to 在露公使 followed by:-
Telegraph the above to 在仏公使 and 在米公使 and add the following to 在米公使 as my instruction:-
As I have reason to believe that the joint representation above referred to will be countenanced by Russian Government, you will keep strict watch over the movements of Count Cassini after his return to Washington and also the attitude of the United States Government when approached by Russian Government in the matter.
Komura.
(要約)
九月二十日午前11時15分発
在倫敦 林公使宛
第94号。在露公使宛第97号電信全文及び以下の追加文:-
上に示した電文を在仏公使と在米公使に電報し、且つ在米公使宛には私の命令として以下の文章を追加されたし:-
私は上に於いて言及されている三外交官の共同提議は露国政府によって承認されるであろうと信ずる理由を持っているので、貴方はワシントンに帰った後のカツシニー伯爵の動静と、更に該事案に関連し、露国政府による折衝が図られた時の合衆国政府の態度についても亦厳重な監視を続けられたし。
小村外務大臣より

[9/22一八五]在英国林公使より 小村外務大臣宛(電報) 韓国中立問題に関し請訓の件
London, 22-9-'02. 2 p.m.  
Rec'd, 23-"-"  8-30 a.m.
Komura, Tokyo.
Special.
No. 67. In reference to your telegram 94. I think it advisable in view of Art. V. of the Agreement of Alliance to inform British Gov't under strict confidence the purport of information of 在日本米公使 adding as the opinion of Japanese Government that "The neutralization of such a state as Corea which has neither the power for self-protection nor the organization for proper administration, cannot be guaranteed without a previous understanding between guaranteeing powers as to who shall take in hand the supervision of administration when an emergency requires it; but the joint control by the interested powers is out of question(the question?), because it will be an additional source of complication detrimental to the power whose interest is preponderating. On the other hand the attempt to arrive at an understanding on the supervision by a single power will only result in the raising of the question that can never be decided by negotiation satisfactorily to all concerned. Therefore the scheme of neutralization is not feasible at present." When the refusal of Japanese Gov't to the Russian proposal of neutralization of Corea was communicated to British Gov't last time our comment was made in the above sense and it seems advisable to keep to the same line of arrangement. See my telegram 103 sent Aug. 1st, 1901. I want for early instructions.
Hayashi.
(要約)
西暦千九百二年九月二十二日午後2時発 同年同月二十三日午前8時30分着
在東京 小村外務大臣宛
特別
第67号 貴方の電信94について。私は次ぎのように考える。即ち、在日本米公使によりもたらされた情報の趣旨を、以下のような文言を日本政府の意見として附加しつつ、極秘の取扱の下に英国政府に伝達すことが日英協約第五条から考えて当を得た態度である。日本政府の意見というのは「自己防衛のための軍事力も、適切な政治を行う政府組織もない韓国のような国の中立化はそれを保証する諸列国の間で、もし緊急事態により必要とされる時には、それら列国が行政の管理をそれら列国の監督下に置くべきであるということについての事前の了解なしでは、保証され得ない。だがしかし、利害関係のある諸列国による共同管理は全然不可能で論ずるに足りない。何故ならばその共同管理は利害関係のより大きい特定の一強国にとっては有害な更なる紛糾の原因を増やすであろうから。他方唯一つの強国による管理についての理解に到達しようとする試みは、全ての関係国に取って満足しうるように交渉によって決定しようとしても決定しきれないような問題を惹起するという結果に陥るしかないであろう。それであるが故に中立化の枠組み作りは現時点では実現不可能である。」というものである。前回の場合には露国提案の韓国中立化案に対する日本政府の拒否が英国政府に伝達された時、我々の説明は上記の考え方に基づいて行われた。そして、それと同様な考え方による対処法に今回も固執し続けることは真に当を得たものの如くである。1901年8月1日付け私の電信103号を見られたい。私は返事の速やかなることを欲する。
林公使より

[9/25一八六]小村外務大臣より 在英国林公使宛(電報) 韓国中立問題は次ぎの訓令迄極秘とすべき旨指令の件
Sent, Sept.25,  4 p.m.
Hayashi, London.
No. 96. In reference to your telegram No. 67, as it is deemed important that a strict secrecy should be observed in the matter for the present, you should until further instructions continue to regard the purport of my telegram 94 as strictly for your own confidential information.
Komura.
(要約)
九月二十五日午後4時発
在倫敦 林公使宛
第96号。貴公使電信第67号について、この事案に於いては現在の所極秘扱いが遵守されることが重要であると思考されるが故に、貴公使は更なる訓令がある迄、本大臣電信第94号の趣旨を厳密に貴公使のみへの秘密情報として取扱い続けるべきである。
小村外務大臣より

[9/25一八七]小村外務大臣より 在米国高平公使宛(電報) 韓国中立、移民法、布哇問題等輻湊に付任地出発延期すべき旨訓令の件
Sent, Sept. 25th, '02. 4-15 p.m.
Takahira, Washington.
No.41. Mr. Stevens is to leave here on October 4th. It has been my desire that you would be able to have temporary leave on his return to Washington. In view however of the question of Corean Neutralization as stated in my telegram No. 94 to Viscount Hayashi, and questions of immigration law and Hawaiian Fire claims very probably to appear in the forthcoming session of the Congress I think it desirable that you should not leave your post at this juncture and consequently I have to ask you to postpone your leave till April next.
Komura.
(要約)
一九百二年九月二十五日午後4時15分発
在華盛頓 高平公使宛
第41号。スティーブンス氏は十月四日当地を離れる予定である。貴公使が同氏の華盛頓への到着時に適宜出発出来るようにすることが本大臣のこれまでの要望であった。しかし、林子爵宛本大臣電信第94号において述べられたような韓国中立化の問題や、米国会の次期会期中に提出の可能性が非常に高い移民法案の問題と布哇邦人排斥決議案の問題等に鑑みて、本大臣は貴公使がこの喫緊時に於いては貴公使の職場を離れるべきではないという方針が望ましいと思考する。そして、その結果として本大臣は貴公使が貴公使の出発を来年四月まで延期することを貴公使に要請するものである。

[コメント]日本の対露国外交方針は 1901(M34) 年 6 月に伊藤博文内閣から、桂太郎内閣に交代し、同年9 月に小村寿太郎氏が外務大臣に就任すると共に対露協調路線から対露対決路線へと切り替わったように感じられます。
[参照]:桂太郎: 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%82%E5%A4%AA%E9%83%8E
日英協約(1902(M35)/1/30調印)の成立は極東アジアに重大な変革をもたらすことになりました。露国はアジアに多大の関心を持つ米国を外交合戦に巻き込もうとしました。或いは、それは見かけ上のことで、裏では米国が露国に仕掛けた可能性も非常に高いと考えられます。これが 1902(M35)年に突如出現した正体不明の韓国中立化問題であります。駐英林菫公使も言っているように韓国中立化は決して成立し得ない計画であったのでありましょう。この時点での、日露米英四ヵ国の「韓国中立化問題」に対する実際の行動とその裏にある思惑について、推測することにしました。勿論、私なりに最善を尽くしていますが、素人の独断と偏見によるものであることをお断りして置きます。
[1].日本の小村外務大臣は駐日米国公使が極秘との条件付きで打ち明けた露国提案の韓国中立化案を一切外部に漏らさないよう厳命しつつ、在露韓英米仏日本公使に伝達しています。日本は 1902(M35)年9月の此の時点では、韓国の植民地化と満州への利権拡大とを視野に入れ、露国と一戦交えることも辞せずとの覚悟の下に外交交渉を進めています。その中で出てきた韓国中立化計画は露英米が日本に対してどのような方策を採るかを見極める材料になると考えたでありましょう。米国が露国と本気で手を組むつもりがあるとは、日本は考えなかったでありましょうが、米国が日露の抗争にどんな態度で望むつもりなのかは未だ不確定要素が沢山あったでしょう。日英協約は日本にとって強力な支援でありますが、なお、米国との外交上、経済上、軍事上の協力は日本にとって露国政策を押し進める上で不可欠な前提であったと思います。露国の野心については、日本は冷徹な判断を下しています。戦争意外に露国の進出を阻止することは不可能と判断したと思います。

[2].露国はツアーリ体制が末期症状を呈しており、政策決定も政権内の権力闘争の影響で思うに任せず、有効な手段を打ち出せないまま、満州占領の既成事実化と韓国への日本の影響力削減とを企図した結果が韓国中立化案の三外交官による提案であったのでしょう。日英協約は目障りですが、日本もそれだけでは露国と戦争するつもりはないであろうから、日本は米国の提案する韓国中立化案には反対しないかも知れないと考えたかもしれません。

[3].米国は露国提案の韓国中立化案を小村外務大臣に極秘との条件付きで内報しました。上に引用した外交文書で見る限り、その中立化案は具体的な内容を示すというよりは、先ず米国が主導権を持って成立への努力をするという、枠組みのみ示したものに過ぎないように見えます。米国は小村外務大臣の峻烈な態度を見て、日本支持の態度を表明し韓国中立化案については全然関与しないかのような態度をとり続けています。しかし、米国の日本に対して取った態度はそのままに米国の露国に対して取った態度であった可能性が非常に高いと思われます。そして、米国は日露両国との交渉を通じて両国の満韓に対する已みがたい野心を感じ取ったでありましょう。米国は日露両方の対満韓侵略意図を阻止するのではなく、それらの侵略意図をどう利用するかを優先して考慮したのでしょう。
なお、米国は英国に対抗しての世界戦略を描いていたでありましょうから、露国提案の韓国中立化案を極秘とすることによって、日英協約がどう機能し、日英両国がどう反応するのかを見ようとする意図が有ったかも知れません。
1902(M35)年当時、米国の対日政策の一つに日本移民排斥の動きがあります。此については日を改めて説明したいと思います。
なお、米国人スティーブンス氏については現在詳細不明でありますが、日本外交文書第三十七巻第一冊中に「ダラム ホワイト スチーブンス氏」なる人物についての記述がありますので、参考までに、機会があれば紹介したいと思います。

[4].英国は露国三外交官による韓国中立化案について、蚊帳の外に置かれたように見えますが、駐英林菫公使は筋金入りの英国派であるように思われます。韓国中立化案についての全ての情報は林公使を初めとするあらゆる情報源から英国政府に伝達されていたでありましょう。英国は自らは手を下さず、日本によって露国の極東アジア南下を阻止することを最大の目標としているように見えます。しかしながら、小村外務大臣の同盟国らしからぬ冷淡な態度は英国政府も慎重にその意図を見極めようとしたでありましょう。
(記入:06/08/ 24 12:30 藍愛和)

[追記]文書[9/22一八五]中、 " the joint control by the interested powers is out of question(the question?)," については、原文の out of question のままですと、「疑問の余地無く正しい」という意味となり、矛盾します。英語は苦手ですが、 out of the question(全然不可能で論ずるに足りない) と勝手に校正しました。「校正恐るべし」とか。 もし私の勘違いならば、諸賢の御叱正をお待ちします。
(記入:06/09/16 17:35 藍愛和)

[追記その2]文書[9/25一八七]中にある米国人スティーブンス氏については、現在までの所正確な人物特定が出来ていません。しかし、同名の人物について興味ある資料を見つけましたので、機会があれば本 blog で発表します。
(記入:06/09/16 18:00 藍愛和)

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